米国の大麻産業は今、嵐の前の静けさの中にある。業界観測筋らは、もうすぐ「ブランド競争」とも言えるものが始まると感じている。
「最終的には、小売ブランド、製品ブランド、機器ブランドの間での権力闘争になる」。こう語るのは、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のティム・カルキンス教授(マーケティング)だ。
「薬局は可能な限り利鞘を得ようとし、(スーパーマーケット大手の)トレーダー・ジョーズが独自ブランドを販売しているように、自前ブランドの販売に注力するだろう」
「クラフト・ハインツがミラクル・ホイップやハインツのケチャップをさまざまな小売店へ卸しているように、他の企業も複数の小売店を通じた独自ブランドの販売によって大きな利鞘を得ようとする」
「さらに、キューリグがコーヒー産業で行っているように、機器分野で地位を確保しようとする企業もあるだろう」
大麻ブランドの進化
カルキンスの予見では、ブランドと大麻とは切っても切り離せない関係になるという。
「ブランド価値の源が問題となってくるだろう。人々は特定の大麻ブランドを求めるのか、それとも特定の薬局、あるいは特定の器具を求めるのか? 現時点では、消費者の多くが市場へのアプローチ方法を探っている状態なので、状況は非常に流動的だ」
大麻市場は2分野に分岐
大麻産業に特化した広告代理店カナブランド(Cannabrand)のオリビア・マニックスに、こんな質問を投げかけてみた。現在、消費者と共鳴しているものは何かという点で、大麻ブランディングは今どのような状況にあるのか?
マニックスは、「とても大きな問いですね」と言った上で、こう答えた。「現在、医療用大麻と成人向け(嗜好用)大麻という2種類の市場が存在し、マーケティング戦略もブランディング戦略もそれぞれ大きく異なる。医療用大麻の場合は概して、患者に対し、医療用大麻の効能や、特定の病気にどのタイプの大麻が効くかを教えることが目的になる」
では、嗜好用大麻の場合は?
「効果や気分に焦点を当てたマーケティングをしている商品が、他と比べ際立っている。また、ライフスタイルに基づいたマーケティング方法も成功してきた」(マニックス)
今後のブランド競争
大麻産業に特化したデータ分析企業ニュー・フロンティア・データ(New Frontier Data)のジョン・カギア執行副社長(業界分析担当)は「ブランディングは、事後の補足的なものから、大麻関連企業の競争戦略の中心的側面へと変化した」と指摘。医療用大麻を使う患者と嗜好用大麻の消費者との間では、消費の動機、商品の好み、購買傾向に大きな違いがあるが、それぞれのグループ内にも大きな違いが存在すると語る。
「特定の消費者層を効果的に識別でき、各グループの優先事項や好みを反映したブランディング戦略とマーケティング戦略を立てることのできたブランドが、成熟が進む市場の中で競争するための最良なポジションを得ることができる」
大麻ブランドの未来
大麻マーケティングの行く末について理解しようとする時、別の商品分野でのブランディングの歴史から推測してしまいがちだ。比較対象の代表例としては、タバコ、ビール、ワイン、スピリッツなどがある。
大麻のブランディングは、これらと同じどころか、似たような道をたどることもないかもしれない。しかし、同じようなビジネス上の目標は達成できるはずだ。マーケティングに精通した酒類生産業者が恩恵を得てきたブランディングの教義や慣習の多くは、大麻産業にも定着することだろう。
大麻産業の将来を曇らせるのは、マーケティングに関する厳しい制約だ。こうした制約により、創造性の新しい波が生まれるとともに、大麻の栽培業者や卸売業者、薬局はコモディティ・トラップ(製品が急速に日常品化すること)を簡単に回避することができるかもしれない。
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授(国際マーケティング)はかつてこう記した。「もしあなたがブランドではなくコモディティなら、価格が全てとなり、低コストの生産者のみが勝者となる」
参考:Forbes Japan – 米国で始まりつつある「大麻ブランド競争」
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