「麻薬戦争」のメキシコ、大麻合法化法案を審議へ 「犯罪組織の暗躍許す」と反対派危惧


「麻薬戦争」のメキシコ、大麻合法化法案を審議へ 「犯罪組織の暗躍許す」と反対派危惧

 メキシコが、マリファナ(大麻)の合法化に向けて動き出した。先の総選挙で両院で最大勢力を獲得した与党が合法化法案を提出。12月1日にロペスオブラドール新大統領が就任した後に審議されることとなった。メキシコといえば、麻薬密売に絡む凶悪犯罪が蔓延する「麻薬戦争」の当事国。犯罪組織の主要資金源となっているマリファナの栽培・販売・使用を合法化することで、治安回復を図るのが、新興左派政党である与党の狙いだ。

 国民世論は賛成・反対に二分されており、ロペスオブラドール次期大統領も態度を明らかにしていないが、法案が通過する目は十分にあると見られる。そうなれば、メキシコはウルグアイ、カナダに続いて国としては3ヶ国目(アメリカは一部の州単位で合法)のマリファナ解禁国となる。

◆犯罪抑止策としての合法化

 メキシコでは、7月1日に過去最大規模の総選挙が行われ、ロペスオブラドール次期大統領が率いる新興左派政党・国民再生運動(MORENA)が勝利。労働党、社会結集党と組む連立政権「共に歴史を作ろう」が両院で過半数を獲得した。最大の争点となったのは、過去最悪を更新している犯罪対策だ。2017年の殺人による犠牲者数は過去最悪の3万1174人で今年はそれを上回る見込み。選挙でも各地を牛耳る犯罪組織に、候補者や選挙関係者が130人以上殺害されたと言われる。

 その背景には、麻薬カルテルが政治にも強い影響力を持ち、警察も取り込まれるなど、国中が麻薬犯罪に汚染されている状況がある。ペニャニエト現大統領は、軍隊を投入して武力で麻薬カルテルを抑え込む強硬路線を敷いたが、結果としてその手法は失敗に終わった。メキシコ国民は、ペニャニエト政権とは異なるアプローチの犯罪対策の実施を訴えたロペスオブラドール氏を支持した形だ。

 マリファナの合法化は、そのロペスオブラドール氏の犯罪対策の一つに位置づけられていると言える。「彼は、軍に率いられた“麻薬戦争”は失敗だったと表明し、いくつかの積極的な新しいアプローチを検討すると約束した。それには、麻薬取引に関連する非暴力的な犯罪者の恩赦や(中略)いくつかのドラッグの合法化が含まれている」(ロサンゼルス・タイムズ紙)という。合法化法案は、次期内務相に内定している元最高裁判事で、MORENA所属のサンチェスコルデロ上院議員によって提出された。ロペスオブラドール氏の意向も反映していると見られるが、同氏自身は法案提出後の記者会見で、マリファナ合法化に対する賛否については明言を避けた。

◆税収をより凶悪な犯罪の対策に当てる

 メキシコの麻薬戦争によって命を落とした者は、2006年以来、約23万5000人で、行方不明者も4万人に上るという。サンチェスコルデロ氏は、法案を提出した理由を、この問題に対する現政権の軍事的介入と厳罰化が機能していないためだとした(米公共ラジオ局NPR)。

 メキシコでは、現在もアメリカの一部の州と同様、医療用大麻の使用は合法となっているが、新法案は、マリファナ(大麻)の栽培・販売・使用をほぼ全面的に解禁するという大胆なものだ。政府による許可制で従業員150人までの企業に商用の大麻の栽培とマリファナの販売を認め、個人にも年間20本の大麻の栽培と17オンス(約1440本分)のマリファナの生産を許す。禁煙ゾーンを除き公共の場所での使用も認める。食用大麻の生産は禁止する。

 メキシコの刑務所収監者の60%以上が、麻薬犯罪者で、その大半はマリファナの販売によって逮捕された者だという。MORENAの有力議員リカルド・モンレアル氏は、マリファナ合法化により犯罪行為と刑務所の人口が減少すると主張する。また、新法案はマリファナの販売に税金を課すとしており、同氏は犯罪対策に必要な財源を確保できるとも言う(NPR)。合法化によって、結果的に警察官と検察官をより重大な犯罪に集中させることができるというメリットも挙げられている(ロサンゼルス・タイムズ紙)。

◆「ウルグアイやカナダとメキシコは違う」

 賛成派の主張だけを聞けばいい事ばかりのようだが、メキシコ国内で昨年行われた最新の世論調査では、過半数の56%が合法化に反対している。その主な理由は、若者にマリファナが蔓延して中毒者が増えることへの懸念だ。メキシコ政治に強い影響力を持つカトリック教会も反対派に名を連ねる。全国父母連合(PTA組織)のレオナルド・ガルシア氏も、「メキシコに必要なのは法の支配であり、犯罪を許すことではない」と反対を表明。「(合法化の)結末は、犯罪の減少ではない。これまで通り組織ギャングが暗躍するだけだ」とNPRの取材に答えている。

 ワシントン・ポスト紙のオピニオンは、先に合法化に踏み切ったウルグアイ、カナダとメキシコでは事情が異なると主張する。「ウルグアイとカナダは安全な国であり、マリファナを禁止していたことによる悪影響を表面的にしか経験していない。しかし、メキシコは麻薬戦争の震源地だ」と、ハードルの高さの違いを強調する。ちなみに、世界銀行の調べでは、10万人あたりの殺人率はウルグアイが7.69人、カナダが1.68人なのに対し、メキシコは25人となっている。同紙は、「(ウルグアイの首都)モンテビデオと(カナダの穀倉地帯)アルバータの農民は大麻を安全に栽培できる」が、メキシコの農民が合法的に栽培を始めれば、これまで違法大麻を牛耳ってきた麻薬カルテルの報復を受けるだろうとしている。

 法案の通過は賛否を保留しているロペスオブラドール新大統領の意向にも左右されるが、MORENAは「年内に大統領のデスクに法案が上がることを期待している」としている。連立与党内には、これまで合法化に反対している保守系の政党も含まれるため、国会でも激しい議論が交わされるのは必至だ。麻薬大国メキシコの動向は、世界のマリファナ合法化の流れに大きく影響するだろう。

参考:NewSphere – 「麻薬戦争」のメキシコ、大麻合法化法案を審議へ 「犯罪組織の暗躍許す」と反対派危惧

大麻は人を幸せにするものであって、もし大麻で人が殺されたり、傷つけられたりしているならば、その法律は変えるべきだと思います。

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