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カンボジア





写真は97年春のものである。カンボジアの首都プノンペンでは、野菜市場で大麻が売られていた。一束というか、一抱え300円ぐらい。かつては隣国タイでも、麻の葉を入れたスープが食卓にだされていた。もちろん、吸ってもいたし、今もカンボジアでは、ほとんど規制らしいものはない。

昨年だったと思うが、朝日新聞に「カンボジア政府が大麻の取締。押収した大麻2トンを焼却処分」という記事が、写真とともに掲載された。しかし、この写真から見ると、2トンなんて数字は、ほとんど意味がないことがわかる。カンボジア政府の取締は、経済援助と引き換えに、大麻・ケシの撲滅を執拗に要求してくるアメリカ向けのポーズだったという話もある。しかし、大麻はタイやカンボジアなど東南アジアでは、古くから生活の中で根づいていたものだという点からみれば、アメリカの要求は不当な内政干渉だと言えるだろう。

実はこの写真は友人が撮ったもので、私自身はまだカンボジアに行ったことはない。そのうち行こうと思っていたのだが、行きづらくなってしまった。というのは、97年7月、カンボジアの第二首相フン・センが、第一首相ラナリットを武力で追い出してしまい、治安状況が極度に悪化したからだ。

ポル・ポト派による自国民大量虐殺などがあった後、カンボジアの武装勢力はパリ協定に合意し、フン・セン氏とラナリット氏双方が首相の座に着くことなどが決められた。それにより、カンボジアは一応の平静を取り戻し、観光客も自由に旅行できるようになった。フン・セン氏のクーデターは、明らかにこのパリ協定を覆すものである。

ところが我が日本国首相・橋本竜太郎氏は、フン・セン氏が武力制圧に成功するや、どこよりもはやく新体制承認を明らかにした。外交問題では常にアメリカの決定に金魚の糞のようについてきた日本政府ではあるが、今回のカンボジア政変に対する態度決定の迅速さには、それまでと違ったものがあった。よほど情報収集に自信があったのか、あるいは、特別な利害が絡んでいるのか、まるでアメリカに対して「カンボジアとビルマは俺んちの裏庭だ、つべこべ言わせねえぞ」とでも言わんばかりである。事実、アメリカが日本に対して対カンボジア経済援助の見直しを迫っても、「人道的見地からそんなことはできない」と果敢にも突っぱねた。イラクや北朝鮮には経済封鎖をしていながらね。

と、まあ、ここまではよくあること。問題はここからだ。権力奪取に成功したこのフン・セン第二首相が、クーデターにあたって、何と、カンボジアで麻薬王と言われている人物から、巨額の資金援助を受けていたらしいのだ。次は時事通信のニュース速報である。

07/22 18:44 時: ◎フン・セン氏のバックに麻薬王−米紙
時事通信ニュース速報
 【ワシントン22日AFP=時事】
二十二日付の米紙ワシントン・ポストは、カンボジアで実権を握ったフン・セン第二首相が大物麻薬密売人とされる人物二人から資金の提供を受けている、と報じた。そのうちの一人からは、カンボジア軍兵士給与のか なりの額が支払われているとの情報もあるという。
 米麻薬取締当局者やカンボジアの関係筋によると、この二人は実業家のテン・ブンマ氏とモン・レシー氏で、フン・セン氏にカネをつぎ込み、カンボジアをアジアの麻薬大国にしようとしているとされる。
 カンボジアを追われたラナリット第一首相も同紙とのインタビューで、「二人は麻薬密売人だ」と非難、フン・セン第二首相は二人から「数百万ドル」を得ていると述べた。

もしこれが事実だとすると、橋本氏はちょっと困ったことになってしまう。というのは橋本氏は年頭に「薬物濫用防止何とかかんとか」という組織を旗揚げし、そのトップに就任し、国内の薬物濫用ばかりでなく、麻薬収入を洗浄するためのマネー・ローンダリング防止を主張するなど、麻薬反対の立場から、活発に国際 的な発言をおこなってきたからである。

このへんを国会で取り上げ、フン・セン体制承認を見なおすように迫れば、橋本氏にとってはちょっと痛いかもしれない。ところが国会議員の誰も、この点から追求しようとはしない。そればかりか、27日の朝日新聞によれば、池田外相はカンボジア新体制の追認を表明、その条件に「パリ協定順守」「憲法と現政治体制の維持」「人権尊重」「来年の総選挙の公正な実施」をあげた。パリ協定を破り、政治体制を改変し、反対派を拷問・処刑し、過去の選挙結果を反故にした張本人に、そんなことを求めるのは無理だ。日本政府はどういうわけか、何が何でも、フン・セン新体制を承認したいようだが、まったく筋が通っていない。

ところで、橋本竜太郎首相の諮問機関「青少年問題審議会」の第十五期初会合が7月28日、首相官邸で開かれる。
  1. 覚せい剤や大麻など薬物乱用のまん延
  2. 援助交際など性のモラルの低下
  3. いじめ問題―などを引き起こす背景
についても議論し、早期に答申する方向。
だそうだが、
  1. 麻薬王から金をもらって武力で権力奪取した政権を承認するのはいかがなものか。
  2. 援助をちらつかせて、他国の内政干渉をするのはいかがなものか。
  3. 権力奪取に成功した側を「勝てば官軍」として承認することは、弱いものいじめではないのか、いかがなものか。
を明らかにしていただきたいものだが、いかがなものか。
もっともこのフン・セン氏、かなりのアメリカ嫌いだそうで、日本の迅速な承認の裏に、日本の対東南アジア長期戦略のようなものが見えなくもない。また、ワシントンポストの記事も、フン・セン政権を追いつめる政治的意図をもって用意されたものだとも考えられる。

いずれにしても、今回のカンボジアの場合を含め、日本政府は薬物濫用反対を唱えているわりには、やっていることが、あまりにもご都合主義的である。日本社会に蔓延するこの「ご都合主義」「原則性の無さ」、これこそが若者の政治不信、教育不信の大きな原因のひとつである。橋本氏は若者に説教をたれる前に、自らの襟を正すべきである。


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